コラム

継 / After story

5分で読める

北こぶし知床 ホテル&リゾート UNEUNA/KAKUUNA(プロジェクトの概要)3/4

北海道・知床半島にある北こぶし知床 ホテル&リゾート。そのホテルにある世界遺産を望む流氷サウナがリニューアルしました。流氷をイメージして直線的なデザインを力強く表現したKAKUUNAと、木の洞窟をイメージして緩やかな曲線でうねりを描いたUNEUNA。

このプロジェクトの発端となった大西さんに、プロジェクトに懸けた想いや実際にどのように困難に挑んだのか、お話を聞きました。

【継】サウナが拓くアーティストリーの未来(約1800文字)

── 竣工式にはご参加されたのでしょうか? 

はい、参加しました。ととのえ親方やホテルの方から「ぜひ来てほしい」と声をかけていただいて。実は、僕らアーティストリーにとって、完成のお披露目に呼ばれるなんて初めてのことで、とても嬉しかったです。

── 以前から企業名を表に出せないことに悔しさを感じていたと「わの休憩所」プロジェクトの時にお聞きしました。

わの休憩所(プロジェクトの概要)1/3 | Artistry

そうなんです。下請けとして関わると企業名は出せない。それが本当に悔しくて、このサウナだけは「アーティストリーの名前を出させてください」とお願いしていました。するとホテルの方からは「なんで今まで出していなかったの?」と驚かれたほどで。その約束を守っていただき、竣工式では僕自身も登壇させてもらえました。

── 実際にサウナを体験された時はいかがでしたか?

 曲線デザインの「UNEUNA」に入りました。すると、オーナーが「このサウナを作ったのは彼です」と紹介してくださって。裸のサウナ室の中で知らない方々から拍手をいただき、「ありがとう、こんなサウナ初めてだよ」と声をかけてもらったんです。これまで僕らが褒められるのは業者さんからがほとんどで、エンドユーザーから直接感謝されることはありませんでした。だから、その瞬間は本当に感動的で、半年間の苦労がすべて報われたように感じました。同時に、この感動を職人たち全員に味わってほしいとも強く思いました。

── 夜にはイベントもあったそうですね。

はい、座談会で登壇させていただき、制作の裏話を話しました。そこで改めて「アーティストリーが前に出てもいいんだ」と実感しました。自分たちのプロジェクトを広報に活用してきましたが、知床の地で、しかもサウナを通じて全国に発信できるとは夢にも思っていませんでした。体も心も整った瞬間でしたね。

── プロジェクトはその後、大きな反響につながったとか。

正直、僕らはここまでの反響を想定していませんでした。けれど「どこを切り取っても美しい」と多くの方がSNSで発信してくださり、雑誌『Discover Japan』では旅特集の表紙に選ばれました。全国紙でサウナが表紙になるのは初めてのことで、アーティストリーの名前まで紹介いただけたのは本当に誇らしかったです。

── さらに「SAUNACHELIN」で殿堂入り、ウッドデザイン賞優秀賞も。

ええ、全国12,000施設以上といわれる中で3度受賞すると「殿堂入り」となる賞です。水風呂や外気浴、清潔性、革新性など多角的に評価される権威ある賞で、最高峰の評価をいただけました。これによって「必ず行くべきサウナ」と認知され、観光にも大きく貢献しましたし、僕らも3D技術を活用したサウナ制作の先駆者として評価を得られました。

── 最後にホテルそのものの印象をお聞かせください。

 初めて訪れて「これは確かに日本有数のホテルだ」と実感しました。スタッフの対応、空間のしつらえ、料理、すべてが素晴らしい。ラグジュアリーという言葉では足りないほどのホスピタリティでした。皆さんもぜひ、このホテルとサウナを体験してみてください。


このプロジェクトは単なる製造業の枠を超えた、真の「Art is Try」の体現でした。ととのえ親方との協力、そしてホテルオーナーとの信頼関係の構築まで、多くの人々の想いが結集したプロジェクトであることが伝わってきました。

特に印象的だったのは、下請けから脱却し、初めてエンドユーザーと直接向き合った体験について語る大西さんの言葉でした。裸のサウナの中で知らない人々から感謝の言葉をかけられた瞬間は、きっと忘れられない宝物のような体験だったでしょう。

今後もアーティストリーの挑戦は続いていくことでしょう。3D技術と職人技術の融合により、どのような新しい価値を創造していくのか、期待が高まります。

お問い合わせ