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第2名古屋三交ビル 1階エントランスMUQUA オリジナルベンチ(プロジェクトの概要)1/4

名古屋駅から徒歩5分ほどのところにある、第2名古屋三交ビル。一見普通のオフィスビルに見えますが、エントランスに入ると、木材で作られた美しい木材の曲線が広がり、モニュメントのようなベンチが目を引く木材に包まれた空間に圧倒されます。

そんな空間を手がけた営業の大西さんと設計の嶋村さんにお話を聞きしました。

【挑】地元木材で創るオフィスビル設計の新たな試み

──休憩所が完成した後、どのような広がりがありましたか?

大西:わの休憩所を作った時に、SNSやプレスリリースなどを通じて積極的に発信していました。その結果、東海テレビのウェブ版などの多くのメディアでも取り上げてもらい、クラウドファンディングも相まって多くの人に知ってもらえたんです。おかげで会社見学に来てくださる方も増え、その中の一人に竹中工務店の設計士さんがいらっしゃいました。「わの休憩所のよう3Dベンチを作りたい」と考えていて、休憩所の取り組みを見て「ここなら面白いことができるかも」と実際に訪ねてくれたんです。

──その出会いが次のプロジェクトにつながったのですね。内容を聞いたときどう感じましたか。

大西:はい。2021年3月に休憩所が完成して、わずか1〜2ヶ月後でした。その案件は新しいオフィスビルのエントランスに置くベンチの話で、納期は数年先。僕らの業界は打ち合わせしてすぐに納品、というスピード感に慣れていたので、数年先という計画に驚きました。オフィス家具はこれまでも手がけてきましたが、共用部のエントランスに関わるのは初めてでした。施主は三交不動産さんで、名古屋駅近くに新しく建つビルでした。見せてもらった提案パースは、木をふんだんに使った大空間のデザイン。東京の大理石で覆われたシックなビルとは違い、木を前面に打ち出した空間で、とてもワクワクしたのを覚えています。

大西:嶋村君、当時のこと覚えてる?

嶋村:当時、最初に見積もりをしている時は、「これ、本当にやるのかな」と思っていました。今までここまで大きいものを作ったこともなかったですし、これだけパーツ数が多いものを地道に重ねていくのが現実的なのかと、当時は思っていたのを覚えています。

──なぜ木をふんだんに使うデザインだったのでしょう?

大西:都会に多い、石や鉄で構成されたエントランスは人に開かれず、入居者だけの空間になってしまう。それなら公開空地を活かして、地域の人が集える場所にしたい、という三交不動産さんの想いがあったそうです。さらに、三重県の会社なので、地元の木材をたくさん使いたいという意向もあり、竹中工務店さんのチームがその想いを反映させたのが、そのようなデザインでした。

──ベンチをつくることにはどんな意義を感じましたか?

大西:木材って、壁や天井に使っても触れられません。でもベンチは実際に手で触れ、座れる。木の質感を肌で感じられる存在なんです。だからこそ、象徴的なベンチを置くことに大きな意味があると思いました。ただ、デザインが複雑でパーツも多く、「本当に実現できるのか」と当初は不安もありましたね。

──設計の進め方には工夫が必要だったのですね。

大西:当時は新しいCADチームが動き始めたばかりで、慣れない中、ラフなモデルデータを分解して見積もりするのはとても大変でした。時間もかかり、なかなか進まない。そこで僕らがお客さんに代わり、主体的にデータを編集し、竹中工務店さんのデザインから 実施設計をサポートする形に切り替えたんです。するとデザインの精度も上がり、打ち合わせのスピードも格段に早くなりました。

3DCADを使うことで、感覚的に操作でき、会議中にその場で微調整できるようになりました。さらに学生アルバイトの方にに依頼してスケールモデルを作り、デジタルとリアルを行き来しながら検討を進めました。

──素材選びにも工夫があったとか。

大西:三重県産の木を使うにあたって、三交不動産さんのグループ会社の製材所と連携しました。ただ従来の規格通りでは効率が悪く、特殊な寸法でお願いしました。3D設計のおかげで歩留まり率も正確に割り出せ、ほぼ必要量ぴったりで製材できたのも成果でした。

──仕上がりにも「木づかい」を大切にされたそうですね。

大西:杉は赤と白のコントラストが強いので、ただ並べるとチグハグになります。そこで色のグラデーションを意識し、自然なつながりになるような配置を提案しました。僕らは「木材の木と気持ちの気を掛けて“木づかい”」と呼んでいるんですが、打ち合わせ中に僕らのこだわりを感じ取ってくれた設計士さんや三交不動産さんから「アーティストリーに頼んでよかった」と喜んでもらえたのが印象的でした。

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初めて手がけるオフィスビルという大きな挑戦と、地元の木材を活かすという新たな試み。どちらも手探りの連続でしたが、こうして一歩踏み出したことで、これまでの家具づくりとはまた違う喜びや学びを得ることができました。小さな木の一片が、未来の大きな可能性につながる――次章の「挑」ではより具体的に、どのようにプロジェクトを進行したのか3D担当をした嶋村さんも交えてお話をお聞きしました。

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